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デスク記事

2013/03/29

 東日本大震災の直後、アメリカの海兵隊が「トモダチ作戦」として被災者の支援を行った。このことに感謝して気仙沼の高校生が、カリフォルニア州南部に在る海兵隊の施設を訪れ、感謝の気持ちを伝えた▼震災から長期にわたり、アメリカの海兵隊は人の救助や、行方不明者の捜索、食糧支給など力強い支援を行った。2年が過ぎて、ようやく落ち着きを取り戻した高校生の心に「あの時のお礼を言いたい」という思いが湧きあがった▼海兵隊は当時「私の家族が行く不明になったという気持ちで捜索しています」と語っていた。泥だらけになりながら海辺の捜索をし、家屋の修理や掃除も行った。ある独居老人が「身体の大きな、力のあるアメリカの方に助けられ、本当に心強かった」と頭を下げていた▼海兵隊が拾い集めた品々の中には、今回訪問した高校生の手に渡ったものもある。「海岸を捜索して下さり、届けて下さった思い出は私たちに希望を与えてくれました」と感謝の気持ちを伝えた。1人の兵士が、ちぎれた紙テープを手にして「気仙沼を離れる時のテープです。大切に持っていました」と告げると、高校生は涙をこらえ切れず両手で顔を覆った▼紙テープは1915年のサンフランシスコ万博で、日本から出品された紙テープが大量に余り、それが「別れの握手」として使われた。それ以来、この風習は世界中に広まったと言われている。テープは切れても心の繋(つな)がりは残る。この兵士の手にしていた一片のテープは、高校生の心に人と人の絆の深さを印象付け、勇気を与えてくれた。