←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2013/04/06

 3日、札幌で少し時間があったので、大通公園近くにある「札幌市資料館」に寄った。大正15年に札幌控訴院(今の高等裁判所)として建てられたもので、札幌軟石を使ったドッシリした佇(たたず)まい。国の有形文化財になっている▼他の訪問者がなかったせいもあり、職員が事細かく説明をしてくれた。札幌軟石は約4万年前の火山活動で発生した。カルデラ湖の支笏湖が生まれ、その時の火砕流が長い年月を経て軟石になった。太古の地殻変動の歴史を今に伝え、小樽運河の石造り倉庫群や、旧拓銀の建物などに使われた▼しかし札幌軟石を使った建物は、かつては数多くあったけれど、今では殆どが壊されてしまった。それでも札幌軟石に興味のある人が、住宅の門構えなどアクセントとして使うなど、意外な所で散見できるという▼「触ってみて下さい」と、サンプルを持ってきてくれた。重厚な石ながら、火山灰の石らしく、すぐ傷がつく程柔らかい。「少し高価ですけれど、市内で一軒だけ、札幌軟石を販売している石材店があるのです」と言う▼この同じ資料館で、札幌出身の漫画家・故おおば比呂司さんの作品展が開かれていた。オランダに長期滞在した時の絵画が100点程。どれもが鮮烈な輝きを持ち、惹きつける作品ばかり。おおばさんは「ヨーロッパの建物には、時間が止まっているような、重厚な雰囲気がある。歴史のニオイが日本の建物には失われてしまった」と説明書きしている。しかしこの資料館には、大正モダニズムの香りが充満していた。機会あれば、訪れてみては如何か。