デスク記事
「雪が消えたら家の中を整理し、不要なものは処分しよう」と妻と話し合っていた。その時期が来たので、先ず自分の部屋の整理から始めた。保管してたら役に立ちそう≠ネどという悠長な考えは捨て、今まで使わなかった物は捨てる事にした▼以前は必要だったが、これからは要らない│という範囲のものは想像以上に多い。文書関係、書物、衣類や色々な道具│。若い頃とは異なり、歳をとってシンプルな生き方をしようと思えば、自分の周辺にある殆どのものが不要な対象になる▼平安末から鎌倉時代の歌人・遺筆家の鴨長明は、50歳を過ぎてから京のマチを離れ、自然の中に一人生活した。求めたのは俗世間の掟にしばられない、精神の自由だった。一般的に人間は集団の中で生きるもの。孤独には弱い≠ニ言われる。しかし反面、年齢と共に、自分の周辺を簡素化して行くことにも憧れるものではないだろうか▼作家の五木寛之は「人生に必要なものは驚くほど少ない」と言っている。誰かが「人生には一人の友と一冊の本、一つの思い出があれば良い」と言っていた。それは極端かも知れないが、表彰状とか感謝状、記念品、山となった写真。いつ買ったか不明の本の数々。それらは今まで生きた軌跡かも知れないが、それらは肥大した人間関係、単純な欲望の産物でもある。それらから解放されても良い頃だろう▼人生で一回くらい、自分の周囲を白い世界にしたい。そこから何が生まれるか。否、何も生まれない方が強いだろう。しかし春の清掃期を迎え、自分の周囲を簡素化する挑戦も、流行語ではないが「今でしょう」。