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日露間の最大の懸案である北方領土問題の解決に向けて、安倍・プーチン会談で「領土交渉再開」という大きな前進を見た。10年間途絶えていた交渉が再スタート。「双方の外務省交渉と、それによる両国首脳の高度な政治判断」など、解決に向け具体的な手法も決まった▼領土問題について、長期間外務省の中心にいた東郷和彦氏の著書「日本の領土問題」によると、鍵になる文書はサンフランシスコ平和条約(1951年)、日ソ共同宣言(1956年)、グロムイコ声明(1960年)の3つ。この中で4島のうち歯舞、色丹両島の日本への返還が表面化したが、日本はあくまで国後、択捉を含む4島一括返還を主張してきた▼その後、海部・ゴルバチョフ声明、細川・エリツィンの東京宣言と続くが、東郷氏によると、この間ロシアは歯舞・色丹を返還し、国後・択捉についてギリギリの譲歩を伝えてきたと言う。その後2001年の森・プーチンのイルクーツク会談で国後、択捉両島が交渉の対象になった。しかしその後の日本の政局の混乱で、折角のチャンスを失った▼東郷氏は「ロシア側にしてみれば重要な問題について、交渉を事実上放棄する日本を、尊敬できる交渉相手と思えないのでは」と言う。「4島は日本固有の領土」は日本の不動の姿勢だが、東郷氏は「その固定観念が自縄自縛となり、現実の諸条件への柔軟対応が出来なかった」と日本の外交の失敗を語る。「双方受け入れ可能な知恵を出し、日ソ平和条約を締結すべき」とする今回の交渉再開。日本は解決への最後の機会と捉えるべきだろう。