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デスク記事

2013/05/10

 以前、医師であり登山家の今井通子氏に会った時、少し時間があると、カバンから葉書を取り出しサラサラと文章を書いていた。そのことを質問すると「講演などで各地を回り、主催者の方々へのお礼の手紙を東京に帰ってから書くと、つい遅れてしまう。旅の途中で時間を見つけて書くようにしています」と話してくれた。そしてたくさんの葉書を見せてくれた▼私たちは、成すべき事をあとで≠ニ後回しにし勝ちである。そのうち宿題がたまり、結局は時間が経ってしまったから、今度別な機会に…≠ネどと、自分勝手な理屈をつけ、結局は礼儀を欠いてしまう。私事で恐縮だが、遠い日、結婚式のお礼を、ついに出さずに葉書だけが残ってしまった▼「そのうち、そのうち、弁解しながら日が暮れる」とは詩人・相田みつをの言葉である。確かに、私たちの生活にはそのうち≠ニ、物事を後回しにする事が根付いているようだ。そのうち≠ニいう、実に便利な言葉で、そう思うことで変に落ち着いてしまう自分が居る▼いずれ≠ニかそのうち≠ニ、宿題を後回しにすると、結局は大きなつけ≠ェ回ってくる。成すべき事の多さがストレスになり、結局は手抜きをしてしまい、その事にさえ仕方ないさ。忙しいんだから≠ニ、勝手に納得して、その場を切り抜ける▼今井さんの行動を見て、それをまねる決心をした。しかしそんなに急ぐことはない。まあ、後で≠ニ、折角の決心なのに、すぐ挫折してしまった。「自分には向いていないのさ」と、また勝手な理由をつけ、そして今日に至っている。