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人は誰もが夢を持つ。実現出来そうもない夢、出来そうな夢。その振幅によって見る夢は異なるけれど、夢が一つでも叶えられれば、その人の人生は豊かな色彩に彩(いろど)られるだろう▼80歳で世界最高峰・エベレストの登頂に成功した三浦雄一郎さんは、山頂から「世界最高の気分。80歳でまさか着くとは。ヒマラヤの美しい景色が眼下に広がる」と、伝えた。世界最高齢でのエベレスト登頂は、三浦さんにとって「夢」であり、実現させる「目標」でもあった▼ほとんどの高齢者にとって、否、若い人にとっても、エベレストへの挑戦は夢の彼方に在るもの。まして80歳の年齢で挑戦するには、あまりにも遠すぎる夢のまた夢。想像する事さえあり得ない夢と言えよう▼しかし三浦さんは「目標」に向かって日々の努力、鍛練を積み重ねた。日常生活で鉛(なまり)を付けた靴を履き、金属で重くしたリュックを背負い続けた。普通の人なら身体を壊すところ、三浦さんの強靭な肉体が、それを可能にした▼しかし今回の挑戦は、非常に危険なものだった。下山途中、体力の限界を超え、自身「幽霊みたい」と言うように、足元もおぼつかず、ヘリコプターでの下山となった。「生きて帰りたかった」と、「死」が、そこまで迫っていた事を語った▼努力の結果とはいえ、世界一幸せな人と言えよう。一緒に登った長男や多くの人にサポートされ、人生最高の喜びと夢を手にすることが出来た。そして世界中の人に夢と希望をプレゼントしてくれた。一回限りの人生を、世界一高い場所で色彩豊かに飾った。