デスク記事
クマ撃ちのハンターが多かった数十年前、親熊が射殺され、2頭の小熊が上渚滑市街地に連れてこられた時があった。その記事を民友新聞に掲載すると、読者から「山奥でヒッソリ生きて来たクマをなぜ射殺する必要があるの?母を失った子熊がとてもかわいそう」と電話がかかってきた。その通りだと思った▼当時は、山でクマに襲われる事故が多発し、山間部の畑ではクマの被害に悩まされていた。放牧の牛が襲われることもあった。藪(やぶ)から、巨体を低くしデントコーン畑に侵入する姿も見られた。人もクマも互いに恐れ合っていた▼そんな時代を経て、野生動物の保護とハンターの減少もあって、現在のクマは人を恐れない「新世代熊」と言われている。世代交代で銃の怖さを知るクマが少なくなり、山と人里の境を越えてくることも多い。市街地を悠然と歩き、人の存在を気にしない光景も見られる▼世界遺産の知床には、観光客がクマの姿を求めてやってくる。人の姿に慣れてしまったクマは、観光客の目の前でユッタリとしている。こんな光景は、ひと昔前では考えられなかったことだ▼しかし野生のヒグマが危険であることに変わりはなく、慣れから来る不慮の事故は常に存在する。特にクマ観光≠ニは縁遠い地域のクマは危険だ。山菜取りなどによる事故は後を絶たない▼とは言え、北海道の野生動物の代表格であるヒグマには、堂々とした風格と、人間が近寄れない威厳を保っていて欲しい。人と相容れない強い動物が、この大地に君臨していることも、北海道を特徴づけているのだから。