デスク記事
カメラを持たないで旅行をしたことがある。報道に身を置く者として、カメラなし≠決行するには少々勇気が必要だった。写真を撮るという行為は、意外に神経を使うもの。カメラがないと旅行先の風景にも、人の話にも心を集中することが出来、旅の印象が脳裏に多く残るような気がした▼テレビのニュースで、石川県で「スマホ観光」という新しい形の観光が始まったことが紹介された。行く先々の情報がスマホ(スマートフォン)に詳しく紹介される。観光客にとっては実に便利。スマホの説明を見ながら、観光地に触れる事が出来る。なるほど、今どきの観光の仕方だと感心する▼しかしニュースで紹介される映像を見て少し疑問に思う事。それは、スマホに映る映像と、その説明を見る時間が多くなり、観光地の空気感、各施設などをユッタリ楽しむことが少ないように思われる▼旅の楽しみは、現地のガイドさんの説明に耳を傾け、各種施設、場所などを視覚で楽しみ、目と耳でそれらを感じ取ること。つまり観光は、アナログの世界こそ似つかわしく思ってきた。しかし文明の利器・スマホには、デジタルの世界の良さ、便利さがあるのも確かだ▼人にはそれぞれ自分に適した遣(や)り方がある。しかしながら、カメラを持たない旅を行った時、先ずは手荷物がなく身軽だったこと、そして何かにつけてファインダーを覗(のぞ)く作業から解放され、手持無沙汰の反面、スッキリ感を覚えたのも事実だ。何より、旅の先々の土地の空気感や風景などが、五感を通して自分のものになったような気がした。