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デスク記事

2013/07/05

 パブロ・ピカソの傑作「ゲルニカ」は、スペイン・バスクの小さな町の名前。1937年、ドイツ空軍の爆撃で破壊され、多数の市民が殺傷された。史上初の都市無差別空爆とされている。衝撃を受けたピカソは一夜でそれを描き上げたという▼ゲルニカ市民は、特殊な取り決め≠ナマチを運営していた。マチの中心に「神聖な木」という特別な木があり、人々は、そこで市民生活のルールを決め、整然と生活していた。「山も、森も、谷間の牧草地も、みんなの入会地。個人のものではない」が基本的な精神。ゲルニカはバスク自治の象徴とされた▼国税庁から路線価が発表された。日本一高いのは、東京銀座中央通りの一角で、1平方メートル2152万円という。ちなみに、北海道は札幌市北5条西3丁目の商業施設前で、256万円という。その価格は主に、経済活動的な価値に依(よ)り決められるのだろう▼時間を遠くに戻せば、土地は人間より先に誕生した。最初は何もない裸の大地。そこに人が住み、経済活動が始まり、地域、国の線引きが行われ、それに依って土地の価値が変化してきた。しかしそれは人間サイドの理由であって、地球的に見れば、土地の価値に差はないと言える▼小説家の故・司馬遼太郎氏は「人々が真に祖国を愛せるようになるには、土地問題がバスクのようでなければならない。国家というのは、つきつめれば山川草木のこと。それに依存している人々の暮らしの総和である」と述べている。絵画・ゲルニカは、線引きで色々な問題が起きている、今日の世界をも表わしているようだ。