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風紋記事

2013/08/01

 2人のギタリスト・吉川忠英さんと田中彬博さんのデュオコンサートを、市まちなか芸術館で聴いた。20代の田中さんと60代の吉川さん。年の差39歳という2人だが、年齢の壁を乗り越え、心の底から気持ちよさそうに演奏していた▼3年前にアメリカで行われたフィンガーピッキング(指弾き)の大会で優勝した若き世界チャンピオンの田中さん。その彼を「僕の生まれ変わりのようだ」と言う大御所・吉川さん。認め合う両者の間に、はったりも気取りもない。吉川さんは「こんなおじさんから、僕の生まれ変わりだと言われて喜んでくれるアッキー(田中さんの愛称)の気持ちが嬉しい」と笑う▼我われは仕事場でも家庭でも、あるいはサークル活動でも「年齢」という肩書きに囲まれて生きている。上司と部下、先輩と後輩…。無意識のうちに、人は年齢という先入観で相手をくくり、それ相応のイメージを抱く。時に先輩は後輩を「青二才」「生意気」だとはねつけ、逆に後輩は先輩を「化石」「おやじ」と馬鹿にする▼道を切り拓いてきたベテランと、新しい道をつくっていく若手。2つの道がつながれば一つの道になり、やがてその境目の見分けがつかなくなる。それが歴史だろう▼吉川さんと田中さんはお互いの年の差を感じていないのではない。年の差を認めながら、同じ道を行く途上で出会い、同じ歴史をつくっていく喜びを分かち合っているのだろう。我々の地域社会で、会社で、サークルで、そんな世代の交流が行われれば、未来はまだ捨てたものではない。(桑原)