風紋記事
取材で講演会を聞くことが多い。他の取材が詰まっていて、講演のすべてを聞くことができない場合もある。講師が早く結論を言ってくれないかと期待していると、話があちこち飛び、何が言いたいのか分からない。じりじりする▽いつだったか、教育問題の講演会で、ある講師が冒頭「今日のテーマはこうで、結論はこういうことになります」と簡単にまとめてから話し始めた。もうそれだけで記事になるほどだ。えらく感心したが、こういう人は話の本編も面白く、結局最後まで聞かされてしまった。日常の会話でもそうだが、話の下手な人ほど、もったいぶる▽経験上、下手な講師の法則を3つ見つけた。一つ。重要なところにさしかかると「この点についてはあとで説明します」と言う講師は、その点については絶対あとで説明しない。二つ。ネクタイが曲がっている講師の話は、必ず面白くない。三つ。冒頭、自己紹介をしないか、しても下手な講師の話はそもそも聞くに値しない▽一つ目については講師自身が一番重要なことをよく分かっていないからである。二つ目は、身だしなみまで気の回らない講師は、話すことで精一杯で余裕がないということだ。三つ目については、講演とは何かをそもそも分かっていない人である。インターネットでどんな情報も簡単に手に入る時代、わざわざ参加者に会場まで足を運ばせるほどの講演会は、内容で聞かせるのではなくて、人間で魅せてほしいのである▽記者も、たまにだが講師を務めることがある。残念ながらこの3つ、すべて当てはまっている。講演は難しい。(桑原)