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風紋記事

2013/10/20

 今年は日本に接近する台風が多い。伊豆大島に甚大な被害をもたらした台風26号に続き、「非常に強い」という台風27号も勢力を強めながら日本列島に向かっている。新たな被害が起きないことを祈りたい。ところで台風報道について以前から気になっていることがある。それは2つのことをきっかけとする、情報量の急激な減少である▼その1つは首都圏への影響が無くなった時。日本の人口の3分の1が関東7都県に集中しているから仕方の無いことかもしれないが、東日本を忘れてもらっては困る。もう1つは台風が「温帯低気圧」に変わった時だ▼台風は「熱帯低気圧」のうち中心付近の「最大風速が約17メートル以上」に強まったものをいう。つまり低気圧としての構造と風速のみが判断基準で、土砂災害の原因となる降水量という視点は初めから無い。台風が北上して冷たい空気を巻き込み、暖かい空気とぶつかる前線が台風の中心まで達すると、構造が温帯低気圧と等しくなる。熱帯低気圧でなければ、どんなに勢力が強くても台風とは呼べない▼温帯低気圧になった瞬間は強烈な低気圧であり、さらに発達することもある。雄武町で最大瞬間風速51・5メートルを記録した2004年の台風18号が近年の代表例だ。今回の台風26号も、カムチャッカ半島付近に到達するまで中心付近の気圧や風速は衰えなかったらしい▼風雨の激しさやそれに伴う災害の危険性を一切考慮しない「温帯低気圧に変わった」という報道。そして気象庁すら進路予想図を作らなくなるという現状。これは改めるべきだ。(瀧澤)