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風紋記事

2013/11/17

 共産主義の国ではなぜ、党の「書記長」が国の最高権力者なのか、子どもの頃、不思議だった。のちに、ある政治学の本を読んで納得した。その由来はレーニンの後を継いでソ連のトップに就いたスターリンにあった▽レーニン時代、スターリンは党の書記長だった。当時この職はいわば「事務長」とか「総務部長」にあたる役割を意味した。悪く言えば雑務をこなす事務方に過ぎなかった。しかし書記長の強みは、金の出し入れを管理し、人事権をも握っていたことだ▽レーニン死後、スターリンは金の力を背景に党内の人心を掌握し、対立していた党の実力者でレーニンの盟友でもあったトロツキーを追放した。ひとたび権力を握ると、自分に歯向かう者を粛清していった。「偉大な指導者スターリン」を見習って他の共産諸国も、国のトップを「書記長」とするところが多くなったのである▽こうした権力の構造は、共産圏に限らず、広く社会一般に見られる。例えば国の省庁では事務次官が、大会社では総務部長が、病院では事務長が、それぞれ実権を握っている例は少なくない▽事務方が組織を動かすというあり方は、合理的で機能的であるようにも見えるが、どこかいびつでもある。リーダーの理念はお飾りにすぎず、要は金を回したり、予算の采配をふるっているヤツが一番偉いという理屈だ▽そういえば長野県の建設業年金基金で23億円もの使途不明金が出た問題で、逮捕された男性もかつて事務長だった。取り巻きからは社長と呼ばれていたという。本当の社長(理事長)は何をしていたのだろう。(桑原)