風紋記事
住宅を修繕する際に市が補助する「住宅リフォーム補助制度」。これまで多くの議員が創設するよう市に要望してきた。業界の活性化だけでなく、その波及効果は市内経済全体に及ぶからだ。しかし市の答えは「(単なる修繕という)個人財産への公的な補助は、公共的な観点から相応しくない」。この答弁をもう何度、聞いたことか▼9日の市議会一般質問で阿部秀明議員が「住宅のリノベーション事業としてならどうだ」と提案した。リノベーションは「刷新」の意味で、建物を元のきれいな状態に戻すリフォームよりも、すこし大掛かりで、新たな付加価値をつける改修を指すらしい。両者の違いが分かったようで分からないまま聞き流していたら、市が乗ってきたではないか。「そういうことなら耐震性の向上とか、省エネとか、低炭素の都市づくりとかに重なってくるから、公的な事業として(補助の)可能性があるかどうか検討する」と宮川市長は言うのである。難航不落に見えた住宅リフォーム補助の不可能論に、わずかだが風穴があいた▼つまり阿部議員は相手(市)が補助の大義名分をつけやすい言葉を探してきてポンと差し出したのである。これをやられたら市は検討せざるを得ない▼リノベーションという一語に阿部議員は、ストーリー性を持たせ、政策が自然と浮かび上がるように提案した。対立軸のなかで議論を深め着地点を見いだしていくのも政治なら、相手の言い分に譲歩しながら、より高い次元に昇華させていくのも政治。阿部議員は後者をやったのだろう。市の前向きな検討に期待したい。(桑原)