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風紋記事

2013/12/12

 昔に比べ減ったとはいえ国内で年間4000人、道内でも200人が犠牲となる死亡交通事故。なぜこんなに多くの尊い命が、毎年繰り返し奪われるのか。事故車両に搭載されていたドライブレコーダーが記録した生々しい映像に、その理由が垣間見える▼直線道路を走る大型車からの視線。対向車線の端に止まっていた車の影から、突然、小さな子どもが飛び出す。ブレーキを踏んでも間に合わない。ひいたと悟った運転手の嗚咽(おえつ)が響いた。別の映像。大型車両のすぐ左側をミニバイクが走る。互いの速度変化によりバイクが前に出たり後ろに下がったり。突然、バイクがバランスを崩して転倒。大型車の下に倒れこんで衝撃が伝わる。「ヤバイ、人をひいた」という運転者の声が聞こえた。次は数秒間の居眠り運転。あくびをかみ殺す運転者の声が聞こえた後、前方に停車する大型車がどんどん迫る。直前で意識が戻ったらしく、右へ急ハンドルを切ったところで追突した▼飛び出した2歳児は何とか助かったがバイクの運転者は亡くなった。居眠り追突では助手席が潰れたものの運転手はギリギリで命拾いした。これらに共通するのは、何かが起こる直前まで、何事も無い日常の運転だったということだ▼例えば「車の陰からの子どもの飛び出し」の危険性は誰もが知るところだが、実際のところ99%は飛び出してこない。それが日常だ。しかし100%では無いわずかな隙間に悲劇が潜む。「たぶん大丈夫だろう」という「だろう運転」ではなく、隠れた危険を察知しながらの「かもしれない運転」が大切だ。(瀧澤)