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デスク記事

2008/11/27

 咲きかけた蕾(つぼみ)に雪をかぶり、葉は萎(な)え、その上の連日の寒さ。こごえてしまった数本のバラを切り取って室内に移した。翌日の朝、少し蕾がふくらんでいるような気がした。もしかしたら≠ニ期待をし、夕方家に帰ってみると、バラは室内の温かさで蘇(よみがえ)ったのか、蝶が羽を広げるように咲き始めていた▼夏の間、次々に開花し、華麗な美しさを誇っていたバラ。カメラに納めるなどして随分楽しませてもらった。しかし秋深くなり、次第に色彩が衰え始め、開花する前に散って行く花たちに、いつしか心が向かなくなっていた▼菊が終わり、すっかり寂しくなった我が家の庭。フッと目をやると、バラが首をうなだれながらも、それでも弱い色彩を保っていた。雪をかぶった赤い蕾の、そのコントラストの何と美しいことか。その時になってこの寒さの中で…≠ニ、ハッとするものを感じた▼勝手なものだ。最高に美しいときはデジカメに保存し、知人に見せながら、少し得意になっていた自分。しかし、いつしかバラの存在を忘れ、雪の季節、色彩感の薄れた庭を見て初めて、バラの存在に気がついた▼かすかに残っていた生命力。室内に移し、最後の開花のチャンスを与えたことで、今までのご無沙汰≠帳消しにしようとする自分が居た。矢張り勝手なものだ。バラは黙して語らず。しかし、室内の温かさで花弁を広げる素直さに心が打たれる▼花弁の所々は、すでに生気がなく黒ずんで縮んでいる。夏の間なら取り払って、美しい花弁だけ残すところだ。しかし冬に向かって散って行く最後の美しさを、黒ずんだ花弁に感じた。何時間持つかどうかの、生命の輝き。バラ特有の香りが室内に広がった。