風紋記事
23年前、イタリア・アルプスの溶けた氷河の中から発見された5300年前の男、通称アイスマン。研究施設に冷凍保存されていた遺体が2012年に解凍され科学者が分析した。この正月にドキュメント番組がNHKテレビで放映(再放送)されていた▼オーストリアの医師が「卒倒しそうになった」と言う発見があった。それはアイスマンの背中や、くるぶしなど15カ所にあった、小さなマークのような入れ墨。その位置が、鍼灸のツボの場所と一致していたのだ。本当にツボだとすると、アイスマンはツボの位置を忘れないよう目印をつけたのか。中国で今から2000年前に体系化されたという鍼灸のツボ療法。それより3000年以上も前、しかもヨーロッパになぜ存在するのか。ただの偶然なのか▼ネットで調べてみるとハッとさせられる見方があった。ある鍼灸師のブログ「安神堂の慎思録」で、そのマークの形に注目していた。入れ墨に「≡≡」という形があることについて、この鍼灸師は中国の占い(易)の卦(け)のマークだというのである。しかも今でもツボにこうしたマークを印刷したシールを貼って治療することが一部の鍼灸師で行われているという。卦の形そのものが、体の気の流れを整える働きがあるのだそうだ▼東洋と西洋の文化。とかく対照的に捉えがちだが、もともとルーツは同じなのかもしれない。それにしても日本では縄文時代にあたる5300年前の人が、我々がシップ薬を貼るように、入れ墨でツボを刺激していたとは信じられない。そのルーツはどこまで遡れるのか。(桑原)