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ソチ五輪に出場した女子モーグルの上村愛子選手はオリンピック出場連続5回目。98年長野が7位、02年ソルトレークが6位、06年トリノが5位、そして10年バンクーバーが4位だった。「何でこんなに一段一段なんだろう」というバンクーバーでの言葉が印象的で今回こそはメダルをと応援に力が入った。でも結果は4位▼84年サラエボ五輪のスケート500m走で金メダル本命の黒岩彰選手が惨敗し「つくらなくてもいい魔物を自ら心の中に作ってしまう」と振り返ったが、五輪には魔物さえも操る、宿命づけられた何者かの計らい≠ェあるような気がしてならない▼女子フィギアの浅田真央選手は05年、15歳で華々しく世界にデビューした。12月のグランプリファイナルでは女王、イリーナ・スルツカヤを破り優勝。一躍注目を浴びて翌年のトリノ五輪への期待が高まった。だが『五輪前年の6月末で15歳』という年齢制限に87日足りず出場できなかった。バンクーバー五輪ではトリプルアクセルという最強の武器をもって臨んだが、歴代最高得点を叩き出したキム・ヨナの前に金メダルには届かず、悔し涙を流した。また4年後を目指す苦闘の日々が続いた。打ち消しても出てきてしまう、五輪の金から見放されているという予感。それがショートの演技失敗で現実のものとなってしまった。「自分でも分からない」と茫然自失の表情が痛々しかった▼だが、翌日のフリーでは観衆を魅了させる完璧な演技をみせた。演技後の涙と笑顔に感動した。浅田選手は計らい≠超えて金メダル以上の伝説をつくったと思った。(新沼)