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風紋記事

2014/03/02

 札幌交響楽団の元首席チェロ奏者で、現在はソリストとして東日本大震災復興支援チャリティコンサートを精力的に行っている札幌市の土田英順さん。震災から丸3年となる3月11日に紋別市で開くコンサートは196回目。毎週1回以上のペースで、77歳という年齢が信じられない▼普通のチャリティ活動は益金の一部を寄付するのが一般的だ。しかし土田さんはまったく異なり、無報酬どころかピアニストの分も含めて交通・宿泊費は自己負担。「自分で行くから会場だけ用意してほしい」という想いに応えてくれるところへ出向き、津波で主を失ったチェロを弾き、人々の心を揺さぶる。これを繰り返してきた▼コンサートは入場無料とする代わりに義援金を募る。集めたお金はすべて、被災地の子どもたちのために使う。当初は他の団体へ託していたが、使途を明確にするため自ら基金を立ち上げ、支援先を決めるようにした。収支と支援内容のすべてをインターネットで公開するのは、志を預かった者としての責任感からだ▼土田さんはこのほど、被災チェロによる「鎮魂の音色」を残すことなどを目的に、新しいCD「祈り」をリリースした。チャリティコンサートで人気の高い「カッチーニのアヴェマリア」や「ベートーヴェンの月光(第1楽章)」など16曲を、ともに活動する鳥居はゆきさんのピアノ伴奏で収録。1枚2500円で、売り上げはチャリティ公演の活動費に充てるという。土田さんが活動を継続できるよう、支援の輪が広がってほしい。このCDを録音した者としても強く願う。(瀧澤)