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風紋記事

2014/03/06

 かつて本屋とレコード店はそのまちの文化度を示すバロメータだった。本屋がどんな品揃えをしているかで、まちの顔が見えてくる。左翼系の本が意外に揃っていたりすると「このまちは組合員が多いのか」と想像したりする。宗教書の揃え方で、そのまちの宗派や新興宗教の勢力分布が透けてみえたりする▼ネット通販の猛威によって、今やまちの小さな本屋もCD店もほとんど消えてしまった。高校時代、下校の途中に本町の商店街に寄り、とき商店で参考書の品定めをして、斉藤商店や杉沢楽器、タケダ楽器でロックの新譜レコードをチェックする。最後にアカシアブックや銭屋書店で立ち読みして花園町の家に帰ってくる頃には、もうどっぷり日が暮れていた。結局その日、買ったのが文庫本1冊だけでも大満足だった▼当時の紋別の商店街は、十分な滞在時間を許すだけの商店が並んでいて、多様な回遊ルートが自然に出来上がっていた。今、あの商店街には感謝の念さえ覚える▼本町4の商店街の一角にこのほどCDショップが出来た。邦楽、洋楽など約1300枚の在庫。決して多いわけではないが、あえて中心商店街でCD店を開店するという心意気にエールを送りたい。加えて商店街に新規出店者がさらに増えることを期待したい▼市が取り組んでいる、新しいまちづくりビジョンにも注目している。ただ、10年先の夢などもう見ている暇はない。来年から、いや今年から、革新的な取り組みを行うくらいのスピード感をもってほしい。中心商店街の再生は、もう待ったなしの問題である。(桑原)