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風紋記事

2014/03/20

 ノーベル賞級の大発見としてそのニュースが世界を駆け巡った新型万能細胞「STAP細胞」の発表から1ヵ月あまり。イギリスの世界的な科学誌ネイチャーに掲載された論文だけでなく、リケジョ(理系女子)の星として大々的に報道された小保方晴子博士(理化学研究所・研究ユニットリーダー)の博士論文にも捏造疑惑が沸き起こり、これまた世界的なニュースになってしまっている▼自然科学の研究は、世界各国の優れた研究者との競争である。それが突拍子も無いほど大きな発見であれば、その後の研究を深める予算確保のためにも、何はさておき発表して「第一発見者」にならなくてはならない。その論文において重要なのは「新事実」のみといっても過言ではなく、研究の動機などを記述する序章などで盗用≠ェあったとしても研究の価値が失われるわけではない▼STAP細胞の共同研究者で、ネイチャーに投稿した論文の共著者でもある米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授は、背中に人間の耳がついているようなネズミ「バカンティマウス」を作ったことでも知られる再生医学の専門家。その彼が、論文の取り下げに反対しているという。もしかするとSTAP細胞存在の片鱗を見つけてはいるが、その確たる証拠がなかなか押さえられないのかもしれない▼論文における画像の操作や出典を示さない多大な引用は研究者への信頼を揺るがす愚行だが、STAP細胞の存在が事実であるなら、それを追求することによる研究の停滞は、人類にとって大きな損失となる。検証結果を待ちたい。(瀧澤)