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風紋記事

2014/06/07

 「まちゼミ」なるものに関する講演会がバスターミナルであるというので聞きに行った。愛知県岡崎市で「まちゼミ」を実践している松井洋一郎さんが講演した▼「まちゼミ」とは商店街の個店が、それぞれの個性を生かして市民向けの講習会を行う事業だという。インド料理店がスパイスの使い方を教えたり、歯科医院が歯磨きのコツについて講習したりする▼講習は無料である。店の売上増にすぐには結びつかないが、ファンは確実に増える。商店街のイメージアップにもつながる。松井さんによれば、売り手にも買い手にも世間にとってもよい結果をもたらす「三方よし」。みんなが得してこそ真の商売だという近江商人の思想にならったらしい▼ビジネスでは双方が得をする「ウィン・ウィン」の関係がいいと言われるが「三方よし」では、それに加え地域社会に貢献するという高い観点がある▼さらによかったのは「まちゼミ」はどこの商店街でも実現可能なことだ。これまで聞いた「まちづくりセミナー」の講師のほとんどは、なるほど様々な成功事例を紹介してくれた。だがそれらは地域の特殊性や偶然性に依存していて、どこにでも通用する普遍的な理論にまで高められていなかった。タメになる話ではあるが、自分のまちではできないというもどかしさがあった▼「まちゼミ」は違う。方程式を確立している。松井さんを呼んだ紋別の商店街の有志は本気も本気である。11月中旬頃の実施を目指すという。そのスピード感がいい。今度ばかりは話だけ、夢だけの活性化策ではなさそうだ。(桑原)