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風紋記事

2014/07/23

 ギタリスト吉川忠英さんの公演「アコースティックパーティ」を聞いた。ゲストは森山良子さん、夏川りみさん。2人の抜群の歌唱力を堪能した。吉川さんのソロは冒頭の1曲だけ。「忠英さんのソロをもう少し聞きたかった」と打ち上げで本人に言ったら「今回はあれでいいんだよ」▼最高の歌手2人を迎えて伴奏に徹したのだろう。それにしてもオーケストラのように豊かに響くギターだ。「俺は歌のバッキングが巧くいった時が実は一番嬉しいんだ」と吉川さんは言う▼8年前、最初にコンサートを企画したのは五十番食堂社長の故・若山徳貢さんだった。その数年前、五十番でいつものラーメン定食を食べていると若山さんが厨房から出てきた。「吉川忠英さんって知ってる?」「名前だけは」「すごいんだよ。忠英さんの音楽でまちを盛り上げたい。協力してくれないか」。若山さんは紋北サッカー部の先輩である。熱意に引っ張られるように取材という形で後をついてきた▼若山さんと忠英さんのおかげで、紋別ではめったに聞けないトップミュージシャンの音楽が年替わりで聞けるようになった。感謝している▼若山さんの死後、どうなることかと思ったら、友人たちがちゃんと運営を担ってきた。彼らもまた裏方という「バッキング」に徹している。打ち上げではカニやホタテの焼き係に回ってゲストをもてなしている。忠英イズムを体得しているかのように▼若山さんの魂は仲間たちにしっかり受け継がれた、と書けば、若山さんは「その表現、ちょっとくさいんじゃないか」と照れ笑いするだろう。(桑原)