風紋記事
数年前から「中2病」という言葉を聞くようになった。思春期特有の背伸びしがちな心持ちを揶揄した言葉らしい。自分が特別な存在であると思い込み、威張ったり、奇異な言動で目立とうとする。注意されると、すねたり、逆恨みする。今、大人に増えているという▼最初にその言葉を知ったのは2年ほど前、芥川賞を受賞した田中慎弥氏の記者会見だ。「もらっといてやる」と言い放つ尊大な態度が、中2病の典型だと話題になった。最近ではニセ作曲家の佐村河内守氏。会見で記者から追い詰められ、本当の作曲者を「名誉毀損で訴える」と逆ギレした。そしてあの号泣県議。「県議という大きなくくりのなかでは(旅費の不正なんか)小さな問題なんです」と泣き喚いた。彼らに共通なのは、自分は特別で何をやっても許される存在だと勘違いしていることだ▼もちろん、人は誰しも自分は特別だと思っている。それが自我というものだ。だが人は、他人もまた同様に「自分は特別」と考えているであろうことも理解している。「自分こそは特別」という2つの自己意識が戦っても、延々決着がつくはずはない。だから人々は社会生活の中で、お互い適当なところで引いてみせたり、余裕の気持ちで相手を立ててやったりして無駄な衝突を回避している▼ところが中2病患者は心底、自分「だけ」が特別と思っている。他人も同様に「特別」であることに対する気遣いなどハナからない。こちらが立ててやれば、ますます増長する。昔の人もほとほと手を焼いたのだろう。だから「馬鹿は死ななきゃ治らない」という諺で、ため息をつくしかなかったのだ。(桑原)