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風紋記事

2015/01/16

 潮見小の元校長、住吉榮樹さんが亡くなった。個人的に思い出深いのは紋別百科事典の編纂や、文芸オホーツク賞の選考を共に行ったことである▼文芸オホーツク賞の選考会で住吉先生は人の作品をけなさなかった。我々は批評するのが役目なのだから、むしろ辛口でいくべきだと思うが、先生は作品のいいところばかり見つけようとする。どれもベタ褒めなのである。じれったくなるほどだった▼ある時、ハッと気づいた。先生はきっと文芸オホーツク誌への投稿者を、教え子のように思っていたのではないか。いいところを見つけ、それを伸ばしてあげようと考えていたのだろう。先生とは文学の趣味も、批評の仕方も全然違っていたが、人に対するこうした思いやりの心には、頭が下がるばかりであった▼百科事典の編纂の時も、ぐうたらな自分をいつも励ましてくれた。直接「頑張れ」と言うのではない。「無事、本が刊行できたら、美味しい酒を飲みましょう」と笑うだけである▼それにしても教育者というのは窮屈な職業だと思う。人に教え、道を説く以上、常に己を律することが求められる。引退しても、元校長としての肩書きがついて回り、人格者として別格扱いされ続ける▼校長を退職後、先生は紋別市立図書館の館長に就いた。退任する時、送別会が行われた。先生は大いに喜ばれ、宴会の冒頭「きょうは、ぶっ倒れるまで飲む!」と宣言した。先生らしからぬ大胆な言い方でハラハラした。確かに先生はいつもよりハイペースで飲んだものの、全然ぶっ倒れなかった。普段と同じ紳士のままだった。(桑原)