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風紋記事

2015/08/09

 ネット通販のアマゾンでアメリカの総合格闘技の輸入DVDを注文してみた。マット・ヒューズという元王者の特集盤。2枚組で収録時間は5時間強もある。過去の試合の殆どがノーカットで入っていた。アメリカからの送料込で1600円。べらぼうに安い。同じものを日本の会社が出すなら、コンテンツを小分けにし、どうでもいい映像で水増しした豪華セットに仕立てるだろう。しかもマニアの足元を見て1万円以上のぼったくり価格をつけるはずだ▼たかがDVDひとつで話を広げるのもなんだが、アメリカの商売は出し惜しみしない。消費者のニーズにこれでもかと応える。上っ面の愛想はないが、商品そのものの「おもてなし」度は日本より上だ。TPPの評価は別として、もしこういう商売をコメや乳製品でやられたら日本はひとたまりもないだろう▼日本マクドナルドの創業者、藤田田(ふじた・でん)氏は今から44年前、1号店を銀座に出した時に「日本人がマクドナルドを食べ続ければ皆、金髪になる」と豪語し失笑を買った。だが確かに若者は金髪や茶髪になった▼考えてみれば日本人が好むファッションも、家のフローリングも、庭でのバーベキューも、スターバックスコーヒーもみんなアメリカが手本だ。幼児でさえヒップホップダンサーに憧れる▼安保法制やTPPで世論調査をやると「日本はアメリカの言いなりになってはならぬ」と多くの人は一応言う。だが我々は嬉々として自らをアメリカ色に染めあげてきた。大国の覇権主義だと批判する前に、我が身の来し方を見つめ直すべきではないか。(桑原)