風紋記事
22日に開かれた環オホーツク海文化のつどいで、紋別漁協・飯田弘明副組合長が地元報告を行った。昨年暮れから1月にかけての暴風雪で被害を受けたホタテ資源について話した。海底でひっくり返って死んでいるホタテの様子を水中カメラの映像で示した。会場からどよめきが起こった。「ほれ、見てみなさい。ここ。やられてるでしょ!ほれ」。目をむいて話す飯田さんの表情は、本人の思惑とは別にどこかユーモラスだ。聴衆も時に笑いながら話にぐいぐいと引き込まれた▼「紋別の前浜で育てているホタテは12万トン。つまり240億円分が入っているんです。これが海なんです!」。声がひときわ大きくなり、もう聞き取れないほどだ。大学教授らの講演に比べ、飯田さんの話は行儀はよくないが、言葉が生きていて魚のように飛び跳ねている。終了後開かれた懇親会でも、全国各地から参加した歴史や考古学の研究者らが、飯田さんの話を絶賛していた▼多くの人は、世の中の決まりごとや常識に縛られ、あたりさわりのない言葉を選ぶ。それらは無難だが死んだ言葉だ▼省みると紋別市の各界のリーダーの人たちで、生きた言葉で話す人は意外と少ない。いろんな会合で繰り返される「あいさつ」。皆、こじんまりしている。言葉は人なり。リーダーたちがこじんまりした言葉しか話せない紋別は、同程度にこじんまりした街だということだ▼自分の言葉で話せるということは、中身のよしあしは別にして思想があるということである。今の紋別には思想が足りない。飯田さんの熱い話を聞きながらそう思った。(桑原)