風紋記事
紋別商工会議所の「紋別成長戦略ビジョン」がまとまった。海外を含む地域外から需要を呼び込み、地域内でマネーを循環させることが紋別の発展につながると定式化したうえで、その実現には地元民が紋別を知り、その資源を生かし、外に発信していくことが大切だとする。一つの定式のもとに各戦略項目が統一されている。紋別の発展に一筋の光を見る思いがした▼だが発展とは何だろうか。哲学者ヘーゲルによれば発展とはただ外に向かって伸びるのではなく、自己の本質に還っていくことである。たとえばどの分野でも、ひとかどの成功をおさめた人は、他人とは違う自分ならではの個性、すなわち本質に立ち戻り、その本質が秘めた可能性を開花させていったのである▼つまり自己の内に反省すればするほど、外へに向かっての形成でもあるようなあり方がこそが真の発展である。背伸びして自分の本質にないものになろうとするのは、ただの移行や変化であり、発展より低い段階だとされる▼なるほど成長戦略ビジョンにおいて「自分を知り、資源を生かし」というくだりは自己の本質に還り、自己とは何かを問い詰めるという意味で発展を目指している。「外へ発信する」こともまた、自己と他者との違いを浮き彫りにするという点で自己認識の一形態だろう▼さて紋別の本質とは何か。豊かな自然を背景にした一次産業、災害の少ない地域、冷涼な気候、流氷などはよく言われる。だがそれだけでは網走などとの差別化は図れない。紋別の本質をさらに絞り込み、磨き上げる会議所の今後の取組みに期待したい。(桑原)