風紋記事
フルタイムで働いても年収が低く生活保護水準以下で暮らすワーキングプアが社会問題化して久しい。連合などの定義によると、単身世帯で年収200万円以下、複数人世帯で300万円以下が該当するという。行政が直営していた施設を効率化の名のもとに民間に委託し、その分、人件費を削減するのは官製ワーキングプアの温床と言われる▼2年ほど前、市議会の一般質問で宮川正己議員が、紋別市での実態を質したことがあった。市長の答弁によると、たとえば市で管理していたスポーツセンターを民間に委託したことによって、その人件費は半分に減っているという。これを行革の成果だと誇ることはできまい▼当時の市長の答弁によると、市役所で年間雇用される非正規の臨時職員の給与は、職種などによって異なるが、ある職種では平均年収193万円(平均年齢49歳)だという。これより短期の雇用の職員では、さらに低いのだろう▼市長は今年を地方創生の元年と位置づけ、将来にわたって人口の維持を目指すという。その重要な施策の一つが、安定した雇用のある地域づくりだ。「仕事が人を呼び、人が仕事を呼ぶような好循環をつくる」と市長は6日の新年説示で述べた。だが民間のお手本となる官が、その実ワーキングプアを助長しているとしたら笑うに笑えない▼雇用をいくら創出しても、その実態が低賃金ならば意味がない。「豊かな地方をつくります」と政治家達は気安く言うが、普通に働く人がそれなりの賃金を得られる地方創生をやってほしい。食えない街の人口が減り続けるのは当然の話ではないか。(桑原)