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風紋記事

2016/02/25

 北方圏シンポジウムの分科会「氷海の民シンポジウム」でシマフクロウの保護に取り組む山本純郎さんの講演を聞いた。天然記念物で絶滅危惧種であるシマフクロウ。彼らが生活できる環境を守ろうと地道な活動を続ける山本さんの語り口は淡々としていて押し付けがましくない。自然保護活動に携わる人は得てして自分のやっていることの正しさを声高に訴えるきらいがあるが、山本さんは正反対である▼シマフクロウとの付き合い方について山本さんは「関心を持って関知せず、というのがいい」と言う。シマフクロウを愛しているからこそ、手助けはしても干渉はしないということなのだろう▼これは人づきあいの基本でもあると思う。相手に敬意と関心を持ち、交流を厭わないが、おせっかいをしてはいけない▼狭い田舎のまちの人間関係は濃密である。誰がこんな失敗をしでかしたとか、誰と誰が親密な間柄であるとか、みんなが噂話に夢中だ。関心がないくせに干渉したがる輩も多い。「君のためを思って言うけれど」としたり顔で忠告するその表情の奥に、薄ら笑いが見え隠れする▼そういえば北方圏シンポジウム開会式で、南極観測隊に参加した朝日新聞記者の中山由美さんが講演し「南極はどこの国も領土権を主張せず、どこの国のものでもないという約束が守られている。これを世界中でやれば平和が保たれるはず」と言っていた。南極もまた研究者らの「関心を持って関知せず」の態度で守られているのだろう。娑婆(しゃば)の人間関係でもお互いがこの態度で接すれば少しは住みやすくなるだろう。(桑原)