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大方の家では、正月に玄関口に門松を飾るのが習慣になっている。門松は歳神が宿る安息の場であり、神霊が下界に降りてくる時の目標の役割を果たす・とされている。しめ飾りは、天の岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)に、外に出てきてもらうために、岩戸にしめ飾りを引きめぐらしたのが始まりという▼鏡餅は、室町時代から発達したそうだが、その由来は明確ではなく、その昔、女性が鏡の前に餅を飾ったから・とか、古代の鏡が丸い形をしていたから・などの説があるようだ。鏡と言えば古代の「やたの鏡」があるが、天照大神を岩戸から引き出す際に使用したという▼日本の風習には、それぞれ謂(い)われがあり、日本文化の伝承として今に伝えられている。ついでに「雑煮」=ぞうに=は、年越しの夜、神を迎えて行った祭りの後、みんなで夜食をいただいたのが雑煮である。神に供えた食べ物を、分かち合って食べた儀式が今に伝わっている▼平成20年が終わり、21年へと移行しようとしている。明るい話題より、殺伐とした、悲惨な事件事故が多い年だった。年終盤に世界を襲った経済危機。世界各地で続いている戦争。それらは次の年へ持ち越される。地球環境は年々悪化し、食糧、水不足は深刻さを増してきた▼悲しい年よさようなら、新しい年に喜びを・と思っても、明確な線を引けないジレンマが付きまとう。それならせめて、家の玄関に門松、しめ飾りを飾り、お供えを置き、雑煮を食べて、少しでも平和な、静穏な平成21年を心に念じたいもの。閉塞した時代≠ニいう岩戸を、知恵でこじ開けて、中から、世の中を明るく照らす現代の天照大神を呼び寄せたい。その神は、それぞれの心の中に宿っているのだ。