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デスク記事

2009/01/28

 大相撲初場所に進退をかけた朝青龍が、大方の予測を超えて優勝した。翌日の記者会見で「優勝する自信はなかった。長いトンネルを抜けて、やっと青空が見えてきた」と場所を振り返った。朝青龍の集中力と、数秒の勝負に賭ける瞬発力が、他の力士より数段勝れていることも、優勝の原動力と言えよう▼優勝決定戦で白鵬に勝った朝青龍がガッツポーズをとったことに、横綱審議委員会などから苦言が出された。「品格ゼロ」「残念だ」などの声も聞かれる。朝青龍の一挙手一投足について、今までも随分と批判が相次いだ▼しかし、相撲ファンが果たしてそう思っているだろうか。欠場も予測された今場所だが、朝青龍は進退をかけて出場した。序盤こそ薄氷を踏む勝利が続いたが、一番一番の取り組みが最良の稽古になって、後半は横綱本来の強さが光っていた▼勝った瞬間の、あの無邪気な笑顔は朝青龍の真骨頂だ。勝っても負けても、表情に出さないで神妙にしているのが大相撲の伝統で、それが品格なのか。それなら、伝統ある部屋の親方が、弟子をイジメで死に追いやった事実、八百長相撲疑惑など、国技∴ネ前の暗部をどう説明するのか▼日本古来の奉納相撲を起源とする大相撲だが、今や門戸は世界に開かれている。力士にも、国民性とか個性があり、それが相撲を面白くしている面もある。朝青龍が欠場すれば、興業もTV視聴率も下がる。出場すれば、大いに盛り上がる▼今の大相撲は外国の力士で成り立っている面もある。世界に門戸を開いたのなら、あまり形式ばかりに走らない方が良いのではないか。その中で「国技」としての精神をいかに取り入れ、日本の誇りとするスポーツにするか、考え時に来ているのではないだろうか。