デスク記事
落石のアパートの一画。除排雪した後に高い雪山が出来た。小学生くらいの女の子が2人、ソリで遊んでいたが、1人が雪山の、反対側の急な場所から間違って落ちた。様子を見に行くと、女の子は雪山の下に、うつむいて倒れたまま動かない。打ち所が悪ければ大変だ。私は駆け寄って「大丈夫?」と呼びかけた▼少し間をおいて「ウフフ」と笑う声。そしてゆっくり顔を上げて、また「ウフフ」と、悪戯っぽい目をしながら「ありがとう、心配した?」と、私を見る。「驚いたよ。こんな高い所から落ちるんだもの。それも頭からだったよ。でも何でもなくて良かったネ」と私▼女の子と、しばし話をした。「おじさんは子供の頃、こんな遊びをしなかったの?」。「いやいや、もっと高い所から落ちたこともあるし、雪が今より多かったから、2階から飛び降りて遊んだこともあったよ」。「へええ、すごいなあ。私も2階から飛び降りてみたい。だって私、雪が大好きなの」。「そうだね、雪はきれいだから、汚れないしね」▼アパートの窓に灯りがともる頃、こんなたわい無い会話が交わされた。その子は雪まみれになりながら、もう1人の友達と「じゃあ、帰るからね。バイバイ」と私に小さく手を振って建物の中に消えていった。急に静かになった夕闇のアパート前。私は、こんな情景が、遠い昔にもあったように思えた▼冬の夜は急速に深くなる。女の子2人は、さんざん遊んだあげくに、お腹をすかして旺盛な食欲で夕ご飯を楽しんでいるだろう。「お母さん、あのね、さっき、どこかのおじさんと話をしていたの」「どんなおじさん?。知らない人には気をつけなさいよ」。そんな会話かも知れない。今度は私が「ウフフ」の番だ。